
信州の日本酒と人
朝日新聞長野総局編著 A5判199P オールカラー 1600円(税別) 2018年10月発行
全国2位の酒蔵数を誇る長野県。その技と人が織り成す極上世界。
朝日新聞長野県版で2016年〜2017年に連載した「酒もよう」を書籍化。県内54の酒蔵で酒造りに携わる「人模様」と酒蔵の「酒模様」を活写します。
女性唎酒師 と「信州の酒PR大使」が酒と人の魅力を寸評した「一酌入魂」を各編に追加。「産学官で新しい県産酒米作り」「信州で生まれた酵母」など11本のコラムと多数の写真も追加して内容充実。
県産酒米へのこだわりや、山廃・生酛をはじめ五割麹・低精白・花酵母・もち米仕込みなどの独自技術、若者や女性の杜氏への進出など、日本酒激戦地の多様性のすべてを紹介します。
<内容・構成>
信州発 酒の端書き「日本酒再興を質量の両面でリードする信州」
●北信
【田中屋酒造店】「普段着の味」で勝負する6代目 《一酌入魂》15キロ圏内の米と水を使う地酒の覚悟
【角口酒造店】試行錯誤の味、その基本は「キレ」 《一酌入魂》呑むほどにお酒が語りだすキレと旨味
【高橋助作酒造店】繊細な美山錦を理想の味わいに 《一酌入魂》味わい深さは人情の深さ
【井賀屋酒造場】肉との相性がいい五割麹に到達 《一酌入魂》厚切りハムと本醸造辛口の旨味二重奏
【丸世酒造店】すっきり甘口のもち米仕込み 《一酌入魂》合コン必勝の美人酒
【桝一市村酒造場】木桶復活に見る伝統と変化の融合 《一酌入魂》純米酒に栗を合わせる妙味
【松葉屋本店】観光地で日本酒の進化を目指す 《一酌入魂》時間をかけてこそ良さが分かる正統派
【高沢酒造】女性杜氏 病に負けず純米吟醸 《一酌入魂》柔らかい口当たりと優しい余韻
【遠藤酒造場】業界の常識にとらわれない挑戦の数々 《一酌入魂》味わいの変化を自分流に楽しむ
【今井酒造店】山廃仕込みに込めた蔵の理想 《一酌入魂》山廃の旨味とコクが炭の熱で奥行きを増す
【よしのや】苦境を救った甘酒で高級路線に乗る 《一酌入魂》鮎との相性は長野の自慢
【酒千蔵野】県内最古の歴史を女性杜氏が継ぐ 《一酌入魂》人を惹きつける人と酒
【西飯田酒造店】花酵母で業界に新風を吹き込む 《一酌入魂》咲く花のごとく味も香りも開いていく
【東飯田酒造店】「萌えキャラ」の背後を支える伝統 《一酌入魂》両刃の「萌酒」は進化の印
【長野銘醸】棚田米と湧き水に手をかけて 《一酌入魂》棚田米を生かした綺麗ですっきりした味わい
●東信
【信州銘醸】軟水へのこだわりと独自技術 《一酌入魂》心地よいクリアな余韻
【沓掛酒造】震災を転機に共に歩み出した2人 《一酌入魂》腰の強さを支える兄弟の絆
【岡崎酒造】「蔵を次代へ」二人三脚の酒造り 《一酌入魂》味も香りも濃厚ながら飲み飽きない
【若林醸造】新米杜氏の奮闘で蔵を残す 《一酌入魂》穏やかな含み香は桜の花びらの如し
【土屋酒造店】米づくりを通じて伝統を再構築 《一酌入魂》生の果実をかじったような爽やかな酸味
【戸塚酒造】雪中貯蔵と風穴で味まろやかに 《一酌入魂》器の大きい万能選手
【伴野酒造】10年の歳月で「ミッシェル」ヒット 《一酌入魂》真面目でストイックな人と酒
【木内醸造】「ふだん飲みのうまい酒」を信条に 《一酌入魂》昔懐かしい洋食にぴったり
【橘倉酒造】時代と風土を背負う酒 《一酌入魂》夏のてんぷらとの相性抜群
【佐久の花酒造】米を生かす無ろ過のふくよかな酒 《一酌入魂》春先に咲いた花のようなさわやかなお酒
【大澤酒造】ラベルが語る酒づくりの物語 《一酌入魂》純米吟醸のお燗が冴える「明鏡止水 勢起」
【武重本家酒造】牧水もよしと認めた「御園竹」 《一酌入魂》夏も冬もジューシーな「十二六」
【黒澤酒造】生酛造りを軸に輸出を拡大 《一酌入魂》究極の生酛「黒澤 穂積」
●中信
【北安醸造】時代に逆行して甘口を極める 《一酌入魂》米そのものの旨味・甘みを感じる酒
【薄井商店】厄介者の雪がコクを引き出す貯蔵庫に 《一酌入魂》眠れる美人酒はエネルギッシュで柔らか
【かぶちゃん信州酒造】観光客の思い出に残る味を 《一酌入魂》軽やかなお酒の秘訣はキレのある酸にあり
【大雪渓酒造】うまみと甘みを豊富な麹で 《一酌入魂》北アルプスの清らかさを持つ「山の酒」
【岩波酒造】転職組の若い力が新風を吹き込む 《一酌入魂》濃厚なコクと酸のある旨味
【大信州酒造】杜氏制度から脱却し「蔵の力」を上げる 《一酌入魂》和製シャンパン「純米吟醸スパークリング」の衝撃
【亀田屋酒造店】限定品を客の前で「量り売り」 《一酌入魂》イカワタとぬる燗がピタッとハマる
【笑亀酒造】吟醸であえて酸味を表現する 《一酌入魂》酸や香りを自在にあやつるカリスマ杜氏
【美寿々酒造】じっくり手をかけて少量生産 《一酌入魂》昔ながらの生粋の日本酒が醸す旨味
【湯川酒造店】二人三脚で広がる味のバリエーション 《一酌入魂》軽やかさから深みまでのバリエーション
【七笑酒造】木曽の誇りとこだわりの純米酒 《一酌入魂》ハヤの天ぷらには吟醸酒「爽笑」
【中善酒造店】つくり手の思いを込めて「低精白」 《一酌入魂》米の旨味と力強さを併せ持つ綺麗な酒
【西尾酒造】「すっきりした辛口」の伝統守る 《一酌入魂》どんな料理も「つまみ」に変える万能のお酒
●南信
【高天酒造】「滑らっこい酒」を父娘で目指す 《一酌入魂》無口で多面的な「辛口」、饒舌な「美絵SP」
【豊島屋清酒部】笑顔と発想あふれる若い蔵人 《一酌入魂》「御柱の郷の酒」は華やかな香りとキレ
【酒ぬのや本金酒造】家族経営ならではの手間のかけ方 《一酌入魂》酒造界のホーキング博士が醸す酒は感動必至
【伊東酒造】県産酒米で全量を賄うこだわり 《一酌入魂》ほんのりとした甘みの後から旨味が追ってくる
【宮坂醸造】「革新」をモットーに新機軸次々 《一酌入魂》酸と甘みのバランスが絶妙な新シリーズ
【小野酒造店】本物を追求する精神を注ぎ込む 《一酌入魂》金紋錦を使った純米吟醸のさわやかさ
【宮島酒店】無農薬栽培米で芳醇辛口を目指す 《一酌入魂》旨味の深さとキレはアルプスの山谷のよう
【漆戸醸造】兄弟二人で「小ロットでいいものを」 《一酌入魂》笑顔が醸す素敵な蕎麦前
【大國酒造】蔵元直売にいちはやく取り組む 《一酌入魂》深い旨味と酸味が濃厚料理に負けない
【仙醸】蔵の可能性を広げるどぶろく 《一酌入魂》人気の「どぶろく」と清酒の両輪
【長生社】全量純米「地元のための酒」を貫く 《一酌入魂》頑固な装いでも華やかな香り
【米澤酒造】蔵の再生で棚田の里への恩返し 《一酌入魂》地元を慈しんできたからこその不変
【喜久水酒造】南信州唯一の酒蔵としての矜持 《一酌入魂》丸く柔らかく日常に寄り添う酒
●コラム
日本酒のできるまで
山田錦を越えよう──産学官で新しい県産酒米作り
普通酒と純米・吟醸・本醸造
どぶろく・生酒・原酒・発泡タイプ
杜氏制度の変化
佐久の酒蔵と自由民権運動
純米酒は「割り水燗」で
信州で生まれた酵母
SAKEを世界に
藤村と安吾の酔前・酔後
若い造り手の59醸プロジェクト
あとがき
TPPと信州農業 〜グローバル化と中山間地農業の持続可能性〜
鈴木宣弘(東京大学教授)/長野県果樹研究会ほか著 A5判165P 1400円(税別) 2016年3月発行
政府や県の「影響隠し=過小評価」を指摘しながら中山間地農業の可能性を探る
TPPの大筋合意により、市場開放分野では農産品重要5項目586品目のうち30%の関税が撤廃される。撤廃を免れた品目でも牛肉などで大幅に関税が削減され、コメなどで無税輸入枠が設定される。重要5項目以外では果樹など軒並み関税撤廃となり、農産物全体では約81%の品目で関税が撤廃される。
我が国がかつて経験したことがない広範かつ大規模な関税撤廃にもかかわらず、政府の影響試算は確かな根拠を示さずに「影響は軽微」とし、国民への説明も国内対策も十分とは言いがたい。
本書冒頭ではTPPに批判的な鈴木宣弘東大教授が、農産物への影響の全体像と長野県への影響を解説。昨年JA長野県グループが発表した同氏試算よりも控えめな減少率を適用して再試算されているが、生産減少額は長野県の推定値の11倍に及ぶ。損失を過少に見積もる国や県の姿勢が問われる。
以降、中山間地に全国最多の小規模農家が存在する信州農業の特質に沿った論考が続く。長野県で特に大きな影響が予想される果樹と畜産分野の現況と対策、大規模な担い手農家育成の課題、小規模農家の存続、新規就農者の増強、消費者サイドから見た市場開放など全11項目で構成されている。
果樹におけるコスト削減の前提となる基盤整備や農地集積、肉牛肥育における子牛不足、大規模経営を妨げる農地の「貸しはがし」など様々な問題が浮かび上がるが、いずれも個別農家では対応不能であり、国や県の実効性のある施策が待たれる。TPP論で抜け落ちがちな小規模農家の存続についても幅広い議論が求められる。
<内容・構成>
1●国民を欺くTPP過小評価と長野県への影響(鈴木宣弘 東京大学大学院農学国際専攻教授)
TPP合意の政府説明・対応の疑問/「踏みとどまった感」を演出した「演技」/「TPPはバラ色で影響は軽微」とするための数字操作/影響試算の考え方/主要品目別の政府再試算の問題点と代替試算/長野県農業への影響についての県の試算と代替試算との比較/長野県の全産業への影響
2●果樹への影響と国・地域・生産者の対策(坂口勝 一般財団法人 長野県果樹研究会会長)
本当に「影響は限定的」か/コスト削減のための基盤整備を/大量リタイアに伴う農地の貸借/流通経費=選果料金への懸念/収穫の3割を占める加工用・果汁をどうするか/主要4品目の概況/国は政策を何も持っていない
3●〈座談会〉新たな“攻め”の積み重ねで果樹王国の再興を(一般財団法人 長野県果樹研究会)
TPP大筋合意の受け止め方/リンゴ・ブドウへの影響/国内対策への要望/生産者・産地としての展望
4●子牛と輸入飼料が高騰する肉牛経営の課題(編集部)
子牛と輸入飼料の高騰/信州プレミアム牛肉の登場/奥信濃畜産の独自飼料とネットワーク化/子牛不足への不安
5●平等原則に縛られずに有効な担い手育成策を(荻原慎一郎 長野県農業経営者協会会長)
無策だった政治家と農協/農業法人に補助金の適用を/米価は必ず下がる/集落営農による農地の「貸しはがし」/農地中間管理機構の問題点/輸出と6次産業化の実態/担い手農家の後継者育成
6●小規模農家と直売所は地域循環の主役(小林史麿 産直市場グリーンファーム会長)
「売れ残り品は持ち帰る」という規約/農家の尊厳を傷つける農民管理/グローバル化か地域循環か/100坪実験農場と農家レストラン
7●制度と親の背中——TPPと家族農業(清水協 フリーライター)
何かが欠けている/家族農業が育むもの/自由をうたうTPPと統制的国家の調和
8●若手後継者だからこそできる試み(平林慎也 北安曇郡松川村「やまし平林農園」(PALネットながの事務局長)
手伝いから後継者へ/SNSを活用したトータルビジネスへ/付加価値を付けたブランディング力
9●新規就農の増加に不可欠な地域一体の支援(編集部)
就農希望者に慎重な検討を促す/相談から研修まで/計画・確保から定着へ/ブドウ栽培に新規参入した渋谷光太郎さん
10●持続可能性と「TPPではない未来」(加藤好一 生活クラブ生協連合会 会長理事)
大筋合意の今/小粒でぴりりと辛い「生活クラブ」/TPPに対抗する「協同」/「競争条件の平準化」で「地産地消」がご法度に/フィリピンの生産者とグリホサート/1%が富を独占し、99%がゾンビに/持続可能な未来へ
11●若者・単身者の輸入農産物への依存とTPP(草苅仁 神戸大学大学院農学研究科教授/谷顕子 信州大学学術研究院助教)
保護コストを払う意味/二つの「二極化」/「二極化」の重層構造と食料自給率/「二極化」と納税者を意識した対策
信州おやき巡り
小出陽子編著 変型版(192×148mm) 191pオールカラー 1500円(税別) 2013年3月発行
信州おやき万華鏡! おやき名人12人&おやきの店220店
ーーあとがきよりーー
そんなわたしが、母が20年間営んできたおやき屋を継ぎます。母の厳しいシゴキの元でようやく一人前のおやきを作れるようになったのは1年後でした。
その頃からおやきの持つ魅力にハマり始めます。地元の新鮮な旬野菜をいかにおやきに包み込むか、それがわたしの命題になりました。今を生きる人たちがおいしいと思うおやきを作ること、それだけでいいと思っていました。
しかし、今回おやきについての執筆の話をいただき、長野県内を取材に歩いたり、歴史本や資料を読みあさったりするうちに、わたしはこんなに奥深く尊厳さえある食べ物のたった一辺しか知らなかった、ということに気づき愕然としました。わたしが作るおやきは、おやきの広い世界のたったひとつの点でしかないと思い知らされたのです。
「一国の食べ物や調理法は、その民族の歴史の深さや文化の程度を知る物差しである」と言われますが、まさしく「おやき」は長野県の歴史や文化と共に生きてきた食の語り部です。
約4000年前に作られていたおやきの原型が長野県の遺跡から出土したというのも何かの因縁なのか、全国各地で作られていたおやきの類が次々と消えていく中で、長野県のおやきは食環境の変化や経済の変遷にもまれながらも、様々な製法を生み、食材を変えて県内各地で脈々と生き長らえてきたのです。わたしたち長野県人はもっともっと「おやき」を誇りに思っていいのだと、今は胸を張って言えます。(略)
●内容・構成
おやき用語解説
1.信州おやき古今東西
1)おやきの起源と歴史
2)おやきと暮らし
(1)お盆とおやき/(2)おやきと年中行事
3)おやきブームと今
4)信州のおやきいろいろ
(1)やきもち・せんべい……やきもち・せんべい・うすやき/そばやきもち/はりこしまんじゅう/柏っ葉やきもち/芋やきもち/こねつけ
(2)灰焼き・焼き……灰焼きおやき/焼きおやき/そばだんご
(3)蒸かし・焼き蒸かし……蒸かしおやき(ふくらし粉なし)/蒸かしおやき(ふくらし粉入り)/焼き蒸かしおやき/丸なすおやき
(4)その他……あんぼ・ちゃなこ/ちゃのこ
5)全国のおやき
(1)そばもち/(2)ひゅうず/(3)ほど焼き/(4)ちゃがし・おやき/(5)おやき
2.おやきの作り方
(1)こねる/(2)包む/(3)蒸かす/(4)焼く/(5)焼き蒸かす
3.おやき名人を訪ねて
【野沢菜おやき】野沢温泉村 高澤洋子さん 温泉を活用して生きがいと居場所に
【まんまる丸なすおやき】山ノ内町 水野コト子さん ご先祖様を敬いつつ丸ごとかぶりつく
【きのこおやき】信濃町 飯田昭子さん 母の温もりときのこマイスターの技
【そばおやき】長野市戸隠 猿田保子さん 母親直伝「そば粉100%で茹でて焼く」
【焼き蒸かしおやき】長野市丹波島 高橋政義さん 厨房に入る酒飲みのおやき好き
【灰焼きおやき】小川村 松本けさよさん 囲炉裏を前に夫婦の息がぴったりと
【丸なすおやき】小布施町 笹岡邦枝さん 小布施丸なすと日本酒が醸す極上の味
【蒸かしおやき】東御市 味工房ゆらり 唐沢美恵子さん・原澤美喜子さん 重曹入りの軟らかおやきで町おこし
【柏っ葉やきもち】北相木村 柳沢まつさん 前掛けにくるんだやきもちの温かさ
【蒸かしおやき】駒ヶ根市 中沢おやきグループ おやきから英気をもらい農家と共存
【ちゃのこ】小谷村 宮沢貴子さん 多くの手間と愛情を注いで改良復活
【あんぼ】栄村 江口起んさん ・高橋春江さん 改良を重ねて26年前に復活新生
4.信州おやき街道
●北信編125店……栄村/野沢温泉村/飯山市/木島平村/山ノ内町/中野市/信濃町・飯綱町/高山村/小布施町/須坂市/長野市(中心部)/長野市(東部)/長野市(南部)/長野市(西部)/小川村/千曲市/坂城町
●東信編26店……上田市・青木村/東御市・小諸市/長和町/軽井沢町/川上村
●中信編48店……小谷村/白馬村/大町市/筑北村/生坂村/池田町/松川村/安曇野市/松本市/塩尻市/木曽谷
●南信編21店……岡谷市・下諏訪町/辰野町・南箕輪町/伊那市/駒ヶ根市/高森町・飯田市/阿智村/平谷村
熱々ほかほか「信州おやき協議会」/あとがき



灰焼きおやき
焼きおやき
焼き蒸かしおやき



蒸かしおやき

丸なすおやき

まんまる丸なすおやき
